掲載日 [2002/11/19]

携帯電話使ったアンケート代行会社

〜 データ活用 経営指導

   経験と勘頼り 改善 〜

  

ベンチャー新世紀




 携帯電話を通じて顧客アンケートを代行するベンチャー企業が、契約先へのコンサルタント事業にも乗り出した。携帯電話を使えば、不特定多数の消費者の意見を素早く吸い上げることができる反面、中高年の経営者の中には、IT(情報技術)が苦手で、データがうまく活用されないケースも多いため、“肉声”も交えて、消費者の声を伝えていく仕組みだ。
(湊口 智子)



携帯電話の画面を見ながら打ち合わせする米田社長(左)ら(大阪市淀川区の「あんくぅ」で)
携帯電話の画面を見ながら打ち合わせする米田社長(左)ら(大阪市淀川区の「あんくぅ」で)
 この会社は、米田雅子社長(39)が2001年3月に設立した「あんくぅ」(本社・大阪市)だ。飲食店やドラッグストアなどと契約し、品ぞろえや接客態度などに関する来店客の意見を、携帯電話を使って調査するシステムを提供している。

 来店客らが、インターネット接続ができる携帯電話で、あんくぅのサイトに接続すると、アンケート画面が表示される。回答して送信すると、携帯電話の画面に、その場で使える割引クーポンが配信されたり、抽選で旅行が当たったり、といった特典がある。

 回答は、あんくぅのサーバーに蓄積されて自動的に表やグラフに加工され、契約企業はパソコンで即時に閲覧できる。契約企業にとっては、アンケート用紙を配布、回収する場合に比べ、手間とコストを大幅に省けるメリットもある。

 契約中の20社を含め、これまでに44社が利用した。さらに、7社が関心を示しており、徐々に契約先は広がりつつある。

 しかし、サービスを始めて1年ほどたったころ、米田社長は、せっかく集計したデータが、あまり店の運営に生かされていないことが気になり始めた。顧客からのクレームに対応していなかったり、低価格の品ぞろえに不満が寄せられているのに、さらに単価を下げようとしたりといったケースも出ていた。経営者が中高年で、携帯電話やパソコンになじみがない場合、その傾向が特に強い。

 米田社長は「パソコンを社員に見てもらうような経営者は、IT機器を使って集めたデータよりも、自分の経験や勘を重視する」と嘆く。

 来店客の声が生かされなければ、あんくぅのサービスそのものの意義がなくなる。また、契約先の業績が上がらなければ、営業面でもマイナスだ。

 ベンチャー企業の経営者の集まりで、この嘆きを漏らしたところ、参加していたコンサルタントらが協力を申し出てくれ、集計データを活用したコンサルタント事業を新たに始めることにした。

 “財布”を握っているのが女性なら、苦情を寄せるのが多いのも女性であることから、今年6月、女性のモニター組織を結成した。30歳代の主婦を中心に、16歳から65歳までの38人がメーリングリストに登録し、あんくぅからの問いかけがあれば、意見を寄せる。

 これまでにコンサルタントを請け負ったのは、居酒屋チェーンや家庭教師の派遣会社など4社。このうち家庭教師の派遣会社では、携帯電話のアンケートを通じ、保護者から、「いつも遅刻してくる」などといった声が届いたことから、家庭教師向けのマニュアルをつくることになった。

 米田社長は「お客様に気持ち良くお金を使ってもらえれば、お客様もハッピーだし、売り上げが増えてお店もハッピーになる。アンケートにコンサルタント事業を組み合わせることで、満足度の高い売り場やサービスをもっと増やしたい」と意欲を見せている。

 あんくぅのホームページアドレスは、http://anqu.net/




 


(C)The Yomiuri Shimbun Osaka Head Office,2001